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国連も認めた環境問題解決スタートアップ!“最先端のモノづくり企業”GSアライアンス株式会社が挑む次世代型二次電池開発

2022.06.25

GSアライアンス株式会社

GSアライアンス株式会社は、環境やエネルギー分野における最先端材料・製品の研究開発を手掛けるスタートアップ企業です。

同社の環境関連分野における事業は、生分解性プラスチックなどの最先端材料の開発、人工光合成や次世代型燃料電池などのクリーンな発電技術の開発など、多岐に渡ります。2020年には、環境問題解決を目指す幅広い取り組みが評価され、SDGs達成を支援する国連関連機関UNOPSから認定企業として採択されました。

脱炭素時代のエネルギー問題解決のため、世界的に広く注目を集める次世代型二次電池(蓄電池)の開発は、同社の主力事業のひとつです。

技術開発の最前線で、自らも研究者として指揮をとるGSアライアンス株式会社の森良平代表(以下、敬称略)にお話を聞きました。

蓄電技術の向上がかなえる、持続可能な社会を目指して

—— 次世代型二次電池の開発をはじめた経緯を教えてください。

 今後の脱炭素社会を見据えたとき、石油エネルギーに依存しない持続可能な社会をつくるには、「発電」よりも「蓄電」に注力すべきだと考えました。

実際に私たちも、太陽光エネルギーを電気に変換する太陽電池や、バイオエタノール燃料を利用して発電を行う燃料電池の開発を行っています。これらの発電池の性能を上げることはもちろん重要です。しかし、再生可能な自然エネルギーによる発電は、環境条件に影響されやすいという問題があり、技術的にも性能向上の限界が近いと言われています。

電気を貯蔵し、いつでも取り出すことのできる「蓄電」技術が進化すれば、今よりもさらに効率のよい再生可能エネルギーの利活用が可能になります。さらに今後、電気自動車の普及やスマートグリッドと呼ばれる電化社会実現のためには、より性能の高い「次世代型二次電池」の開発が不可欠です。

—— 現在、普及している二次電池にはどのような問題があるのでしょうか?

 スマートフォンやノートパソコンなどの小型デバイスをはじめ、電気自動車や産業用途など、広く使われているのはリチウムイオン電池です。

リチウムイオン電池は、電圧の高さや電池寿命は優れている一方で、製造コストの高さと電池容量の小ささなどが主な課題としてあげられます。

リチウムや正極に使用されているニッケル、コバルトは現在世界中で需要が急増しているため、埋蔵量の偏在と枯渇化により、将来はさらなる価格の高騰が懸念されています。また、リチウムイオン電池を電気自動車用バッテリーや社会インフラとして活用するには、よりパワフルな二次電池としての大容量化が必要です。しかし現在、リチウムイオン電池は理論上の限界容量にほぼ達しており、今後、性能の飛躍的な向上を目指すことは技術的に難しいと考えられています。

そのため、世界中の電池メーカーや自動車メーカーなどが、リチウムイオン電池に代わる次世代型の二次電池開発にしのぎを削っている状況です。

GSアライアンス株式会社の開発する「強くて、安い」次世代型二次電池とは?

—— どのような二次電池の研究開発が進んでいるのでしょうか?

 私たちが目指しているのは「強くて、安い」二次電池です。「強い電池」として、一度の充電で長持ちする充分な「電池容量の大きさ」を持ち、さらに、くり返しの充電でも性能が落ちない「良好なサイクル特性」を兼ね備えている電池を開発しています。

現在手掛けている次世代型二次電池の主力製品は5つあります。アルミニウム硫黄電池、リチウム硫黄電池、全固体型リチウムイオン電池、リチウム過剰型正極材料、一酸化シリコン系負極です。これらの中で、特に注力しているのは、材料から独自で開発を進めているアルミニウム硫黄電池です。

——アルミニウム硫黄電池の特徴を教えてください。

 アルミニウム硫黄電池は、リチウムイオン電池と比べて、理論的に7~8倍の電池容量を持つと考えられています。また、資源が豊富でリサイクル率も高いアルミニウムを原材料とすることで、安価に製造できるメリットがあります。

さらに、アルミニウム硫黄電池は安定性と安全面でも優れています。リチウムイオン電池は可燃性で発煙や発火の危険性があるため、取り扱いに注意が必要です。一方、アルミニウム硫黄電池はすべての構成材料が化学的に安定しており危険性が低く、毒性もないため、製造工程や使用時も安全で扱いやすいという利点があります。耐熱性があり、およそ250℃の高温下でも使用できるという特徴もあります。

アルミニウム硫黄電池の使用用途としては、小電流で長時間の電力が必要なセンサーや、重さやサイズを大きくすることで電力量を増やした定置用蓄電池などが適していると考えています。特に、近年のエコ意識の高まりや災害時バックアップ電源として、家庭用の定置型充電池のニーズと需要は大きいとみており、アルミニウム硫黄電池の持つ安全性やコスト面のメリットも最大限活かせると期待しています。

現状の課題は、充放電を繰り返すと劣化が進みやすいことです。今後は、一度の充電で長くもつよう改良を重ね、リチウムイオン電池よりもさらに「強くて、安い」電池を目指して開発を続けています。

—— 二次電池産業は、中国・韓国をはじめとする海外勢の台頭など、国内外の大手メーカーによる競争が激化しています。GSアライアンス株式会社の強みはどのような所だと考えていますか?

 二次電池は、基本的には”正極“、”負極“、”電解質“から構成されるシンプルな構造です。そのため、「良質な部材の開発」が電池の性能を左右する重要なカギとなります。

私たちは、カギとなる「素材・材料の開発と合成」から「最終製品の生産」までを一貫して行っています。巨額の研究開発資金を有する日本や欧米の大手自動車メーカーでも、材料開発から製造までのすべてを自社内で行っているところは、ほぼないのではないでしょうか。基礎研究レベルの開発を大学と協働で進めているメーカーは多いと思いますが、そうすると実用レベルの技術に至るまでに競合との遅れが生じてしまうデメリットがあります。

ゼロからイチを実現するために必要な最先端材料に関する情報や知見を、すぐに社内に落とし込み、開発アイディアを迅速に試行できるスピード感も私たちの強みです。さらに、自社の環境関連分野における横断的で幅広い材料開発の経験と技術も、それぞれの研究開発によい相乗効果をもたらしています。

テクノロジーの進化とともに「モノづくりマインド」で二次電池開発をさらなる次元へ

—— GSアライアンス株式会社が二次電池開発事業として展開している“NEXT DIMENSION”について、今後の展望を教えてください。

 現在は、目標としていた二次電池の性能がほぼ確保できたため、次の段階に進む資金を必要としています。研究投資やESG投資の活発なアメリカ(ボストン)に営業拠点を置いて資金を調達し、主力製品を次の開発段階へ進める予定です。今後の世界展開を視野に、まず年内に主力製品を量産体制にし、実用化を目指したいと考えています。

今後、さらなるIoTの発達や各種デバイスの小型化など、テクノロジーの急速な進化にともない、二次電池の需要と導入ポテンシャルはますます増加すると言われています。私たちはどんな分野でも「中小企業だからといって下請けにはならない」という気持ちで研究開発を行っています。性能のよい電池ができれば、製品として電池だけを売るのではなく、車も作って自社の電池を載せればいいのです。材料でも、製品でも、車でも、どの分野に参入したとしても、私たちは「ゼロからモノをつくる」体制と「勝つ」マインドで、最先端の技術開発に挑戦していきます。

まとめ

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、注目を集める次世代型二次電池。世界的な需要の高まりの中、開発競争はますます激化しています。大企業と比べ、資金やリソース面で不利になる中小企業ですが、GSアライアンス株式会社は少数精鋭の機動力と確かな技術を武器に、最先端に挑み続けています。現役の研究者であり、経営者でもある森代表の「世界最先端の研究開発とモノづくり」に対する姿勢と誇りは、技術でもビジネスでも「勝てる」GSアライアンス株式会社を牽引しています。

【ライター情報】幸田さおり
東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。生活者目線でわかりやすく伝えることをモットーに、サイエンス領域や時事ニュース解説記事などの執筆を中心にライターとして活動。

監修者によるコメント

川上 浩良

東京都立大学 都市環境学部 環境応用化学科 教授

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エネルギー分野でのCO2削減と、その安全、安定供給の実現には、蓄電池や送電網などの電力系統の強化が不可欠ですが、GSアライアンスが現在注力して研究を進めているアルミニウム硫黄電池開発はその方向性とも合致し、さらには資源リスクも考慮した材料開発には大いに期待が持てます。また、今の製造現場で最も重視されている、いかに最終製品の開発スピードを上げるかに関しても、材料開発から製造までを全て内製化する、とする経営手法にも興味を持ちました。現在はオープンイノベーションを活用した開発が世界の潮流になりつつある中で、その対極にあるGSアライアンスの取り組みが今度どのような成果に結びついていくのか、注目していきたいと思います。

川上 浩良

東京都立大学 都市環境学部 環境応用化学科 教授

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2022年度: 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授
2020年度 – 2021年度: 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授
2006年度 – 2019年度: 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授