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より正確に、より多くの人へ医療を届けたい。「急激な医療革新」でAMIが挑む、地域格差の解消と未来型ヘルスケアとは

2022.12.19

AMI株式会社

少子高齢化が進む日本において、地域による医療格差は大きな社会課題です。
病院の閉鎖、医療従事者の不足、医師の偏在や、身体的・地理的条件などにより、適切な診療を受けられない患者は多く存在します。

AMI株式会社 (以下、AMI) は、「急激な医療革新の実現」により社会課題解決を目指す研究開発型スタートアップです。
聴診器にイノベーションを起こし、遠隔医療サービスの社会実装に取り組むAMI。
2022年9月、最初のプロダクトが薬事承認されました。
AMIの目指す遠隔医療の実現について、代表の小川晋平氏(以下、敬称略)にお話を聞きました。

聴診器を200年ぶりにアップデート!「超聴診器」で心疾患を早期発見

——どのような研究開発を進めているのでしょうか?

小川 私たちは「超聴診器」の研究開発・販売、遠隔聴診システムの実現、および遠隔医療への応用に取り組んでいます。

2022年9月に、「超聴診器」のベースとなる最初のプロダクト「心音図検査装置AMI‐SSS01シリーズ」が薬事承認され、医療機器メーカーとしてのスタート地点に立ったところです。

グラフィック① AMI株式会社の事業展開
AMI株式会社の事業展開

——「超聴診器」とはどんな製品ですか?

小川 「超聴診器」は、心疾患の診療において、周囲の環境に関わらず、医師の迅速で正確な診断をアシストする医療デバイスです。

大動脈弁狭窄症や心不全などの心疾患は、症状が現れる前に早期発見し、適切な治療につなげることが重要となります。新薬の開発やカテーテル手術など、新しい治療法の選択肢は増えている一方で、検査方法(スクリーニング)は十分とは言えないのが現状です。さらに、検査の必需品である聴診器は、実は200年以上も大きな技術革新がなく、これまで医療従事者の経験と聴覚に頼らざるを得ませんでした。

「超聴診器」は、心電と心音を同時に計測し、独自アルゴリズムとデータ処理により医師の診断を支援する情報を提供することを目指しています。

心音のデジタル化だけではなく、音質にもこだわり、開発しました。

第一の特徴は、ヒトが聴こえない音域(非可聴周波数帯)までデータ化し、解析できることです。

さらに現在は、全国の医療機関で臨床研究を行い、心音をはじめとした様々な生体情報のデータベースを構築しています。そして、データベースを基にしたAIによる自動診断アシスト機能の実装を目指し、さらなる研究開発を進めているところです。

※「超聴診器」のうち、AI診断アシスト機能は医薬品医療機器等法未承認のため販売・授与できません。

グラフィック②「超聴診器」
 超聴診器

音の可視化で実現。よく見える、よく聴こえる「遠隔聴診」。どこにいても質の高い医療を

——遠隔聴診とはどのようなシステムですか?

小川 医師が行う診察には問診と、基本手技である視診・聴診・打診・触診がありますが、従来の「オンライン診療」では、問診と視診しかできませんでした。

これまでにも遠隔で聴診をしようという取り組みはありましたが、音の取得・送信・出力の際に、聴診に必要な音を正確に伝達できず「音が壊れる」という課題がありました。

そこで、私たちは「超聴診器」の技術を活用し、遠隔でもクリアな音質で聴くことができ、さらに心音を画像データをとして送信する「遠隔聴診対応ビデオチャットシステム」を開発し、遠隔聴診時に音が壊れてしまう問題の解決に取り組んでいます。

グラフィック③遠隔聴診対応ビデオチャットシステム
遠隔聴診対応ビデオチャットシステム

——遠隔医療への取り組みの実際について教えてください。

小川 従来型のオンライン診療にAMIのコア技術である遠隔聴診を加え、医療レベルの向上を図ることが、私たちの進めている遠隔医療の形のひとつです。

遠隔聴診技術を軸にした「クラウド健進®」は、自社で製品化した「AMI指先採血キット」による血液検査や他の検査項目を組み合わせることで、自宅や薬局など様々な場所から、特定健診(メタボ健診)と同じ項目をオンラインで検査できるというサービスです。

2018年度からは、熊本県水俣市からの委託を受け、クラウド健進®の実証事業を実施しました。2020年度には、熊本県水俣市、国保水俣市立総合医療センターと三者協定を締結し、実際の診療現場で「遠隔聴診対応ビデオチャットシステム」を利用したオンライン診療の実証事業を支援し、山間部の診療所の患者と中核の医療機関の医師をつなぐシステムを検証しました。

2021年度からは、遠隔聴診のシステムを軸に、さらに対象を拡大し、介護施設の患者と中核病院の医師をつなぐ取り組みも実施しました。

さらに同年、経済産業省「地域産業デジタル化支援事業」に採択され、宿泊施設を利用するついでに、健康チェックや医師からのオンライン受診勧奨を受けることができる新たな試みの実証を行いました。

グラフィック④クラウド健進
クラウド健進®

AMIの進める「急激な医療革新」が目指す、未来の医療とは?

——「超聴診器」の今後の展望についてお聞かせください。

小川 短期的展望として、「超聴診器」の性能を上げるための研究開発をさらに加速し、世界に誇れるプロダクトとして、日本国内にとどまらず、世界中に展開していきたいと考えています。

次のステージとしては、私たちは「超聴診器」をハードウェア、ソフトウェア、AI、遠隔医療サービスのすべてを含んだ「概念」として定義し、さらなる研究開発を進めているところです。

「超聴診器」にAIによる自動診断機能が実装されれば、遠隔地での診察において、「見る」、「聴く」、「AIが導いた結果を得る」ことが可能になります。

また、人間の体はオーケストラのように、さまざま部位で、多様な音を発しています。

現段階での「超聴診器」は心疾患診断に特化していますが、本来の聴診器は呼吸音、嚥下音、血管音など、体のあらゆる音を聴くツールです。

将来的には、心臓聴診にとどまらず、「体の奏でるオーケストラ」から、各パートの音を聴き分けることで、幅広い疾患への適応を目指しています。

「超聴診器」は、医師の耳や頭で判断できる範囲を超え、患者の心や体の声を傾聴し、共感し、寄り添うための新しい医療ツールとなる可能性を秘めていると期待しています。

——AMIが理想とする医療のあり方について、どのように考えていますか?

小川 技術の進歩により、機械的な診断精度は格段に上がります。医師の診断をAIがアシストすることで、誤診や見落としなどのヒューマンエラーが減り、医師は患者の状態をより複合的に、包括的に診られるようになると考えています。

「木も見て、森も見る」ような、きめ細やかで俯瞰的な診察が可能となり、今まで以上に患者の価値観やQOLに寄り添った診療が期待できます。

また、いつでも、どこからでもリモートで受診できる「クラウド総合病院」は起業当時から描いていた構想で、「超聴診器」はその実現のための第一歩となりました。

——「クラウド総合病院」構想について、詳しく教えてください。

小川 「クラウド総合病院」は、専門性の高い医師がクラウド上に常駐し、離島・へき地・海外にいる医師や患者自身がいつでも利用できる医療システムです。

「超聴診器」だけではなく、さまざまな医療機器と連携することで、さらに質の高い遠隔医療システムの社会実装を目標としています。

私が熊本地震で医療ボランティアとして現地で活動を行っていた際、大変ありがたいことに全国の医師から医療支援を申し出る連絡をたくさんいただきました。しかし実際、遠方の医師が日々の診療もある中では、時間と距離の都合から現地入りが難しい場合も多く、もどかしさを感じた経験があります。

遠隔で診療ができるツールやシステムがあれば、「助けたい」という思いをもつ医療リソースを有効に活用でき、災害時医療に大きく貢献できると考え、起業に至りました。

AMIの長期的な展望としては、「クラウド総合病院」を活用し、自身の健康管理は自宅や職場で行える世界の実現を目指したいと考えています。

【まとめ】

医療DXの加速により、ますます注目されるヘルステック産業。

モノづくりの素養はなかったと語る小川代表が、自身が抱く夢の遠隔医療実現のため、「形のあるデバイスを作ってみる」というスモールステップを乗り越えることから、AMIの軌跡は始まりました。医師としてのハードワークのかたわら、当直室で慣れないハンダゴテに悪戦苦闘しつつ製作した「超聴診器」の試作品は、「100円ショップの材料を組み合わせた稚拙なもの」でした。

ひとりの医師が目指す高い理想からスタートしたAMI。

現在では、小川代表と想いを共にする医療従事者やエンジニア、AI、データ分析など様々な分野を専門とする仲間も加わりました。

AMIは、単なる「モノ」としての聴診器の枠組みを越え、「どこでも、誰でも、質の高い医療を受けられる世界」を実現するための「概念」として「超聴診器」の研究開発を進め、着実に、「急激な医療革新の実現」に挑んでいます。

【ライター情報】幸田さおり

東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。生活者目線でわかりやすく伝えることをモットーに、サイエンス領域や時事ニュース解説記事などの執筆を中心にライターとして活動。

監修者によるコメント

岸 拓弥

国際医療福祉大学福岡薬学部・国際医療福祉大学大学院医学研究科(循環器内科分野),教授/ 日本循環器学会情報広報部会長/日本循環器協会理事

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心臓の病気を診察する際に重要な聴診の道具である聴診器は、医師のヴィジュアルイメージにもなっているほど知られていますが、実は昨今心臓専門の医師ですら使いこなせていない現状があります。その要因を解決し、さらに聴診データを活かした新しい医療システムまで開発されているAMIの取り組みは、個人のwell-beingを最も破綻させると言っても過言ではない心臓病克服の大きな柱となると確信しています。いつでもどこでも誰でも、個別最適化された診療を受けることができるSocity5.0時代に向けて、ますますAMIの熱い思いに期待しています。

岸 拓弥

国際医療福祉大学福岡薬学部・国際医療福祉大学大学院医学研究科(循環器内科分野),教授/ 日本循環器学会情報広報部会長/日本循環器協会理事

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2019年 - 現在: 国際医療福祉大学福岡薬学部・国際医療福祉大学大学院医学研究科(循環器内科分野),教授
2015年 - 2019年:九州大学循環器病未来医療研究センター,部門長