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Modisの地方創生VIが目指す持続可能な街づくりとは

人材を“人財”に。
Modisの地方創生VIが目指す持続可能な街づくりとは

2022.06.26

Modis株式会社

「僕らは真の課題解決に携わりたい」ー。エンジニアの可能性を、ニッポンの可能性に。

少子高齢化、人口流出、雇用の減退…、地方都市を悩ませるリアルな課題にこそ取り組む意義がある。人財育成を強みとするAdecco Groupのグループ会社でテクノロジーソリューション事業を展開するModis株式会社が掲げる挑戦とは。

Modisエンジニアが培った技術スキルと課題解決力を活用して地域の社会課題を特定し課題解決施策を構想する独自プロジェクト「地方創生バリューチェーン・イノベーター(VI)人財育成プログラム」が目指すビジョンについて、地方創生事業や躍動する人財開発に携わる未来創造部長の種畑恵治さんにお話を伺いました。

「地方創生VI」それはModisがつくる新たなテクノロジーソリューション

コンサルティング力と技術力を備えたエンジニア集団による解決

━━地方創生バリューチェーン・イノベーター(VI)について教えてください。

種畑 地方創生VIはModisのコンサルティング力とテクノロジー、豊富な経験と知識を有するエンジニアが、自治体職員や地域住民と共創しながら地域の課題発見から解決に向けたビジョン構築、施策の実施までを行います。

これまでAdecco Groupでは人材派遣事業に長く携わってきましたが、リーマンショックや新型コロナウイルス等のインパクトが企業を直撃したことで、「エンジニアは指示書を忠実に遂行するだけでいい」という時代は終わったと言えるでしょう。『VUCA時代(*1)』と呼ばれる今、課題解決に向けて自律して動ける人財が求められています。過去の前例やデータが通用しない時代に求められる課題解決力、特に日本は社会課題の先進国と呼ばれる国です。これらの問題に取り組むことこそが、真の課題解決者だとModisは考えます。
*1)VUCA 時代︓将来の予測が困難な状況を⽰す造語。「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をつなげたもの。

企業や自治体の問題解決に特化したModisが提供する「バリューチェーン・イノベーター(VI)」の特徴は、『頼まれなくてもやるお節介気質』というマインドです。現場の課題を下から吸い上げてどんどん解決していく。頼まれたことだけやる、それでは人の能力は向上しない。我々は企画を提案して終わりではなく、採用されるのであれば、企画実現までを任せていただく姿勢で臨んでいます。現在、プロジェクトの数は企業・自治体を合わせて1700件以上、エンジニア人数は約9000名。一人ひとりがこのような考え方で現場と向き合っています。

━━地方創生VIによる人財育成プログラムとはどのようなものなのでしょうか。

地方創生VIによる人財育成プログラム

事前研修としてビジネスパーソンのスキルやマインドを座学で学びます。特に国家施策であるSociety5.0 やSDGsの実現に向けた政策提案やビジョン構築などが主となります。

Modisの独自性が発揮されるのはここから。対象地域のフィールドワークを前に視察を通して自治体の担当職員や地域住民の方々からヒアリングを行います。どんなことでも良い、地域の皆さまが抱える小さな疑問こそ地域が抱える大きな課題につながります。「課題を教えてください!」という唐突な会話が通用するのはビジネスシーンだけです。地域の皆さまからお話を伺う際には、全く別の手法が必要になります。例えば、その方の目線を通して見えている地域の状況を把握する対話方法、普段の仕事や生活の中で「我慢していること」、「あきらめてしまっている事」を聞かせてくださいと問いかけます。そうすると周囲の意見を気にせずに主体的な意見がどんどん溢れてきます。例えば「家族と旅行に行きたいけど、自分が抜けると仕事が止まってしまうので10年以上長期旅行に行けていない」、「子供ができてからプロ野球観戦に行けていない」、「子供が3人もいるので自分一人の休まる時間がない」など。些細な事に見えるかもしれませんが、このような小さなわがままこそ、地域住民の本音です。このような状態が起こってしまう地域社会や職場の構造に原因がある事が分かってきます。前例踏襲、既定概念にとらわれやすい行政業務や教育現場などは特に、一度立ち止まって既定概念や過去の前提を見直してみる事から始めてみるのも面白いと思います。小さな積み重ねを続けながら、成功体験を重ねつつ、地域の方々と一緒に“課題解決脳”を一緒に作っていくことが大切だと感じています。

フィールドワークでは地域住民への取材も行います。まちのキーパーソンは地元情報を熟知しています。関係性の構築とともに情報を収集、交流を深めながら地域資源や課題を掘り下げます。地元建設業者やカフェ店主、調理師に自転車屋さん…、取材させて頂いた記事は「地方創生VI キーパーソンSTORY」としてホームページ上に公開、現在約150本のインタビュー記事がアップされています。取材を通して見えてくる課題や地域の魅力、Wikiには載っていない地元住民ならではの情報など多くのことを学びます。毎年継続的に取組む地方創生VIチームは、それらを吸収し年々成長していきます。

視察やフィールドワーク後も継続的に行政職員や地域住民の方々とコミュニケーションをとり、情報収集をしつつ関係を構築していきます。フィールドワーク、住民取材から得られた情報をもとに分析したり、追加のヒアリングをしたり、1年の締めくくりとなる年間報告会に向けて、活動内容や課題分析結果をまとめていきます。年間報告会には自治体の首長や職員、地域住民の皆さまを招いて活動報告と把握した課題や分析結果、次年度以降の取り組み可能性について発表します。

人財の躍動こそ課題解決のエネルギー源。自らの手で切り拓く地方創生

━━取り組む中で感じた地方自治体の課題にはどのようなものがあるのでしょうか。

種畑 デジタル化の遅れや少子高齢化による学校の閉鎖、雇用機会の減少、担い手不足、地元文化の継承など問題はさまざまですが、事業を通して私が感じる課題の上位概念としては『当事者意識が生まれにくい構造』です。

行政は大手企業が事業に参入すれば業者がすべてやってくれると思い、住民も行政に対して期待はするものの自ら行動を起こすことはない。効率化を理由に分業を推し進めた結果、日本にはこのような文化が根付いてしまっていると感じます。結果として、互いに受け身の姿勢のまま、課題は改善されず。大量生産、大量消費の時代はそれでも経済が循環できていましたが、価値が有形から無形に移り、体験や体感に価値が生まれる超複雑な経済社会が到来しています。正解はなく常に最適を探し続ける時代です。行政職員も地域住民も一体となって課題に向き合う時代です。社会実装するのは誰か。その答えは自分たちです。当事者意識をもって課題解決に向き合い自分たちが出来る事から行動に移す、そのために我々も一緒になって考え、行動していきたいと思っています。

━━具体的な事例を踏まえて取り組みを教えてください。

福島県矢祭町で取り組む「持続可能なGIGAスクール構想の実現にむけた支援」についてご紹介します。矢祭町は人口5500人ほどの山間の町です。最初、町からのご依頼もあり文科省が掲げるGIGAスクール構想について教職員の方々と対話する機会がありました。担当した矢祭町チームのメンバーには、教職員の方々頭の上に“?”が浮かんでいるのがしっかりと見えたようです。なるべく横文字を使わず、国がやりたいことをわかりやすいように翻訳しながら説明。その後も何度か勉強会を開いてようやくGIGAスクール構想の本質について共通理解をつくる事がスタートラインでした。

課題解決を目指すのであれば、身近な所にデジタルに強いエンジニアがいると安心しますよね。困ったらすぐに聞ける専門家として『地域活性化起業人』という総務省の制度を活用し自治体側にポストを用意していただきました。地方創生VIに参加しているエンジニア社員が着任して、現在も教育現場におけるデジタル分野のお困りごとに対応しています。

「こんなことできたら便利なんだけど」、「はい、それできますよ」という具合にどんどん物事が進む・改善していく成功体験を重ねた結果、こんな事やあんな事もできるのでは?とデジタル技術を活用して実現できそうな事を、いつしか教職員の方々自ら考え始めるようになりました。今では「いろいろなことが出来そうでワクワクする!」とまで言っていただけるようになりました。もともとネガティブに捉えていた現場の教職員の方々が、このような行動変容につながっていることが何よりも嬉しいです。

矢祭ではGIGAスクール構想の一環でタブレット端末400台を導入しました。これまで通りの既定路線では自治体から大企業に発注されるため、周辺都市部や首都圏の大企業など地域外へとお金が流出します。私たちはこのような構造から脱却し、域内経済の還流モデルを構築、地域の雇用を創出する事につながると考えました。地方創生VIとの連携により、矢祭では町の電気屋さんが第一受託者となってタブレットを町へと納品する流れを作り、Modisによる技術支援体制を構築。3年後には電器屋さんが子供たちのタブレット端末の初期設定や維持管理まで行えるようになるまで伴走支援していきます。

地域にお金が還流する仕組みづくり

町の電気屋さんが端末の維持管理やメンテナンス、故障に対応することができれば地域内でお金が還流するようになります。地元住民が参加する場を創出する。これも地域住民との対話を重ねる中から生まれたアイディアです。

タブレット端末の修理と一緒にエアコンの相談も…、そんなビジネスへの波及効果も期待できます。地域にはまだまだ躍動できる人財がたくさんいる。子育て世代のママさんたちがデジタルスキルを身に着ける事で、ICT支援員やGIGAスクールサポーターなどデジタルツールを使った新しい働き方、雇用を生み出すことができるかもしれません。

良きパートナーであり続けたい。目指すのはウェルビーイングな街づくり。

地方創生VI 活動対象地域

━━Modisが意識するSDGsとはどのようなものでしょうか?

種畑 「質の高い教育をみんなに」、「産業と技術革新」はもちろんですが、我々Modisとしては地域の社会課題を解決しながらその先の経済成長も目指しています。自治体としても今後は自主財源を確保しつつ、民間企業や専門家と連携しながら地域課題の解決に取り組む事が当たり前になると思っています。それがSDGsの目指すところであり、Society 5.0の実現にも繋がる部分です。

「やりがいのある仕事が地元にある」、「大人が生き生きと働いている」。このような状態を子供たちが見て知り感じる事で、それがシビックプライドとして醸成され、地元に残る、帰ってくる人財となっていく。今すぐに結果が出なくても構いません。小さな事例を積み重ねて「それ一緒にやってみよう」という関係が生まれた時に、初めて経済が動いていく。マネタイズのポイントは後ろの方でいいと考えています。それまでは営利目的ではなく、社会課題を一緒に考える良きパートナーでありたいし、私達だけでなく同じような想いで価値づくりから取組む事が出来る民間企業が増える事に期待していきたいと思っています。

━━今後の展望を教えてください。

2019年は5地域、20年には10地域、21年には14地域と地方創生VIのプログラムは拡大しています。22年には新たに島根県津和野町・北海道神楽町・大阪府阪南市・宮崎県都農町の4つの地域が加わり20地域での活動へと成長しました。地方創生VIは4年目を迎えました。地方創生VIから生まれた様々な課題解決提案が事業化に向けて動き出す地域もあります。

パートナー関係を結び新たな事業モデルを生み出す自治体規模としては人口約5万人以下の地域が適していると考えます。多くの地方自治体が当てはまる規模ですね。まだまだ関わっていきたい地方自治体が山ほどあります。自分のライフスタイルに合った場所に暮らし、幸福度の高い生活や働き方ができる人が増えていくこと、それが地域全体の活性化につながっていくと信じています。

まとめ

課題先進国の日本だからこそできる挑戦がある。真の課題解決のためには街の主役たちの躍動は欠かせない。「私たちにもできる」さらには「私たちだからできる」と地域住民の行動変容を呼び覚ますModisの地方創生VIに大きな可能性を感じた。子どもたちが「将来はこの街で暮らしたい」と思えるような街づくりこそがきっと産業、文化、伝統などすべての営みをサスティナブルにしていくのだろう。

【ライター情報】イワモト アキト
新聞社にて13年間にわたり政治、行政、スポーツ、文化と幅広く取材。フリーライター&フォトグラファーとして独立し、現在はスポーツ誌やSDGsメディアでの執筆と撮影を中心に活動しています。

監修者によるコメント

田中 研之輔

法政大学キャリアデザイン学部教授/一般社団法人プロティアン・キャリア協会 代表理事/明光キャリアアカデミー学長

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優れたコンサルティング力と最先端のテクノロジーを備えるModis社が手がける地方創生VIは、この国が抱える社会課題を一つひとつ解決していきます。ポイントは、エスノグラフィック・リサーチとアジャイル開発にあります。住民たちの声に耳を傾け、日常生活の問題に寄り添うことで浮かび上がる課題群に対して、柔軟にかつ実践的なソリューションを提示していくアプローチです。9000人のエンジニアがすでに1700以上のプロジェクトを動かしている実績は、この国の未来を創出する持続的な取り組みであるといえます。分業化された部分提案ではなく、有機的に連携された総合提案だからこそ可能なのです。私もフィールドワークをベースとしたソリューション提示を専門としているので、地方創生VIに大きな期待を寄せています。エンジニアの開発力を結集させ、社会課題に向きあう先駆的なモデルとして、この国のより良き未来を創出されることでしょう。

田中 研之輔

法政大学キャリアデザイン学部教授/一般社団法人プロティアン・キャリア協会 代表理事/明光キャリアアカデミー学長

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法政大学キャリアデザイン学部・大学院 教授
一般社団法人 プロティアン・キャリア協会 代表理事
Glosa 代表取締役