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脱炭素社会の未来を見据え、「長く愛され選ばれつづける」マンションを。ZEH-M開発・分譲を手掛ける株式会社シーラの挑戦

2022.09.06

株式会社シーラ

株式会社シーラは、都心11区を中心に、横浜・川崎エリアで投資用単身向けワンルームマンションの開発・分譲を根幹に、不動産版クラウドファンディング事業、太陽光発電事業、AIを活用した不動産テック事業、暗号資産のマイニングマシン開発・製造販売など、不動産投資関連事業を幅広く展開しています。

主力事業のひとつ、“省エネ住宅” ゼッチ・マンション(ZEH-M)の開発は、近年の環境意識の高まりや、東京都による「新築住宅への太陽光パネル設置の義務化」制度提案により、社会的にますます大きな関心を集めています。

ZEH-M開発の実際と、不動産開発事業の現場から見た環境課題解決について、株式会社シーラ代表取締役の湯藤善行社長(以下、敬称略)にお話を聞きました。

カーボンニュートラル時代の新しい住宅モデル “ZEH”、“ZEH-M”

——ZEH、ZEH-Mとはどのような住宅か教えてください。

湯藤 ZEH(ゼッチ)とはネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略語です。「省エネ」と再生可能エネルギーを活用した「自家発電」により、エネルギー収支をゼロにすることを目指し、戸建住宅を維持していくというモデルになります。

ZEHとは

ZEH-M(ゼッチ・マンション)は、ZEHのマンション版となり、省エネの達成度により4段階に定義されています。

ZEH-Mの定義・分類

——マンションのZEH化は、どのように実現するのでしょうか?

湯藤 私たちはZEH-Mの入門である「ZEH-M Oriented」(以下、オリエンテッド)の開発を行っています。断熱効率のよい躯体(サッシや壁など)、熱効率のよい家電製品(エアコンや給湯器など)を積極的に導入し、従来の住宅よりも20%の電気使用量を抑えることで「オリエンテッド」を実現しています。

マンションのZEH化

「付加価値」の先へ。お客様に安心と安全な未来を提供する「選ばれるマンション」開発

——株式会社シーラの手掛けるZEH-Mにはどのような特徴がありますか?

湯藤 私たちは「オリエンテッド」の認定を受けつつ、独自で太陽光パネルを設置し、省エネだけではなく、再生可能エネルギーも積極的に活用できるマンションを開発しています。

一般的に、マンションのZEH化においては、太陽光パネルを設置する住棟の屋根面積に対して住戸数が多すぎるため、発電によりエネルギー収支をゼロにするのが難しいという問題があります。特に、私たちの展開している単身向けワンルームマンションは都心・駅近に位置するので、必然的に住戸数の多い高層となります。そのため、より高いZEH評価基準を満たすことは都心のマンション開発では厳しいのが現状です。

「オリエンテッド」を手掛けるデベロッパーは数多くありますが、私たちはもう一歩先を目指し、ZEH-Mの分類にこだわらずに、本来の「ネット・ゼロ・エネルギー」という理想に少しでも近づけるようなアプローチをしています。

——ZEH-M開発に取り組む経緯やきっかけを教えてください。

湯藤 競合との差別化を模索する中で、ZEH-M開発に取り組む前段として手掛けた「水害対策マンション」SYFORME SUMIYOSHI(シーフォルム住吉、江東区)の成功は大きな自信となりました。

この物件は、隅田川と荒川に挟まれた地盤の軟弱な立地にありますが、それを逆手に取り、近年多発する台風や、集中豪雨による河川の氾濫などの水害対策に特化して開発しました。コロナ禍で賃貸稼働率が低迷している城東エリアにおいて、少々割高の賃料にもかかわらず大きな反響があり、早々に満室となりました。防災対策に注力するデベロッパーとして多方面から注目を集め、全国住宅産業協会から優良事業表彰を受彰するなど、高い評価をいただきました。

この事例で、共用施設や室内設備の充実など「日々の住み心地」に直接関与する品質面の付加価値だけではなく、「環境配慮」や「防災対策」といった意識・安心面の満足度もお客様に評価され、商品として「選ばれる」ことが実感でき、期待をもって、本格的にZEH-M開発を進めることになりました。

「つくる」葛藤を越えて、高い不動産開発・技術力で「長く愛されるものづくり」を

——ZEH-Mは、戸建住宅と比較して普及率の伸びしろが大きく、今後ますます注目を集め、競争の活発化が予想されます。ZEH-M開発において、株式会社シーラの強みはどのようなところだと考えていますか?

湯藤 私たちの主力商品である「シーフォルムシリーズ」は、コロナ禍においても入居率99%以上という稀にみる水準を維持しており、不動産開発力・販売力には高い実績があります。技術面でも、自社内にゼネコン機能(建設部門)を有しているため、開発から設計・建設・販売までを一貫して行えるプロフェッショナル集団であるという自負があります。

2022年2月には、日本太陽光発電株式会社(現:株式会社シーラソーラー)を完全子会社化しました。太陽光発電の専門部門と連携し、よりエネルギー効率の良いZEH-Mの開発や保守・管理に至るまでをパッケージで展開できるのも大きな強みです。

私たちの取り組みと実績を評価いただき、環境に配慮した不動産の開発と普及に金融面で注力する大手金融機関と、デベロッパーとしては初(※)となる資本業務提携を締結いたしました。(※2022年5月現在)

——今後の事業の展望を教えてください。

湯藤 今後、私たちが提供する住宅は、原則すべてZEH基準をクリアするものを目指していきます。

不動産開発を行う企業として、極端なことを言えば、「つくらない」ことが地球環境に対しては最も配慮することかもしれませんが、人類が経済活動をしていく上で「つくらなければいけない」という葛藤は常に抱えています。

そのため、きちんとメンテナンスされ、建て替えの必要がなく、できる限り地球環境に配慮し、少しでも長く存在し続けられるようなマンションを作ることが、私たちデベロッパーの義務であり責任であると考えています。SDGsに関しても、気候変動への対応や自然災害対策、安全・安心な住まいの提供など、マンション開発に関連する社会課題が多く含まれており、私たちが果たせる役割はまだまだあると考えています。

また、不動産を購入するお客様の多くはローンを利用します。環境配慮型マンションの開発は、グリーンボンドなど近年注目を集めるESG投資との関連性も高く、金融経済の面からも、ZEH-M開発が「持続可能な社会」の実現に貢献できる可能性はとても大きいと感じています。

太陽光発電事業については、今後様々な可能性を模索し、展開を加速できることを期待しています。私たちの手掛けるマンションへ電力を供給するだけでなく、社会活動を行う団体への電力支援や農業ビジネスとのかけ合わせなど、不動産事業と太陽光発電事業のシナジーによる社会課題の解決や脱炭素型の新たなビジネス領域に挑戦していきます。

株式会社シーラの環境関連分野における事業展開と取り組み

まとめ

これからの社会は、あらゆる商品が「環境に配慮していること」を基準に選ばれる時代です。住宅も例外ではありません。新しい世代に向けて、「エコ思想」や「環境意識」はさらに大切な価値となっていきます。顧客であるオーナーや入居者に選ばれつづけるだけではなく、社会からも長く愛されるマンションを目指し、株式会社シーラはカーボンニュートラル時代の新しい不動産開発に挑戦しています。

【ライター情報】幸田さおり
東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。生活者目線でわかりやすく伝えることをモットーに、サイエンス領域や時事ニュース解説記事などの執筆を中心にライターとして活動。

監修者によるコメント

矢本 成恒

名古屋商科大学 経営大学院 教授 / 日本開発工学会理事

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日本政府は、2050年には温室効果ガスの排出をゼロにする目標を掲げている。住宅業界では、2030年以降の全ての新築住宅・建築物に対して、ZEH基準の省エネ性能を求めている。もちろんZEHには居住者側のメリットがある。断熱素材や省エネ設備、太陽光発電などによる、光熱費削減や快適性である。更に、今後の住宅の資産価値を考慮した場合にも、ZEH対応が必須になると言われている。 しかし、このZEHの断熱性や気密性については、開発・設計という初期段階からの対応が必要になっている。今回のシーラ社のZEHマンションの取り組みは、開発から保守までのZEH住宅のバリューチェーンを構築しているので、最適な住宅を提供できる先駆的な事例だと言える。最近ZEHマンションはいくつか出現してきたが、今後は早期に実績を重ねた企業が、この分野の更なる発展を牽引していくことになるだろう。

矢本 成恒

名古屋商科大学 経営大学院 教授 / 日本開発工学会理事

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2013年度 – 2022年度:名古屋商科大学, 経営大学院, 教授・博士(工学)
2012年度 – 2022年度:中小企業診断士(東京都中小企業診断士協会所属)
2010年度 – 2022年度: (一社)俯瞰工学研究所, 設立社員・主任研究員